2011年9月28日水曜日

演出論的覚書:Ⅳ章3節3款:作中世界に関する演出II。クロスオーバー

  (3)作中世界に関する演出 II:クロスオーバー設定

  自社作品の間で明示的または黙示的に世界設定上の連関を与えているゲームブランドは少なくない。サーガ化またはシリーズ化した作品群ではそれが最も顕著に現れているが、そうでない場合でも、例えば旧作のキャラクターと新作のキャラクターに親族関係が見出される(名字が同じである)といったような緩やかな連関はしばしば見られる。それらの意図及び効果は様々であり、ファンサービス的になされる場合もあれば、舞台設定やキャラクター造形に対して背景設定の重厚さを加える場合もある。

  世界設定上の実質的関連を伴わない場合でも、旧作のキャラクターを背景CGのモブにまぎれ込ませてエキストラ出演させる例や、作中作(作中に登場する映画、小説、カラオケ曲等)のかたちで旧作に言及する例もある。また、続編作品において前作のBGM(のアレンジ曲)や背景画像が使用される場合もあり、旧作のシーンの本歌取り的イベントが盛り込まれることもある(註21)。これらは多くの場合、ファンサービスとして理解される。

  他の創作分野においてこれらの実践に類似する概念として、「シェアド・ワールド」(小説など)、「スターシステム」(漫画)、「カメオ出演」(映画)などがある。


註21) サーガ化した作品系列は、最も強い意味での(しかも大規模な)連関を有すると言える。非AVG作品に多く見られるもので、alicesoft『Rance(ランス)』シリーズ(1989年~。神ルドラサウムが創造した大陸世界)、Eushully『戦女神』シリーズ(1999年~。「ディル=リフィーナ」世界)、Triangle『魔法戦士』シリーズ(2002年~。参考:『魔法戦士レムティアナイツ』までの略年表)が代表的である。
  シリーズ化した続編作品における設定継承もしばしば見られる。フルプライス4作品以上で共通世界設定のあるシリーズとして、『Piaキャロット』(1996年~)、『BALDR』(1999年~)、『夜勤病棟』Mink、1999年~)、『THE ガッツ!』オーサリングヘヴン、1999年~)、『カスタム隷奴』KISS、1999年~)、『闇の声』Black Cyc、2001年~)、『傷モノ』RaSeN、2001年~)、『催眠』BLACKRAINBOW、2001年~)、『ミライ』FlyingShine黒、2003年~)、『マブラヴ』(2003年~)、『What a』Liar-soft、2006年~)、『姦染』(2006年~)が挙げられる。Studio e.go!も、『キャッスルファンタジア』(1998年~)、『メンアットワーク!』(1999年~)、『IZUMO』(2001年~)、『神楽』(2003年~)をシリーズ化してきた。でぼの巣製作所としての『神楽』シリーズ(2009年~)も、続編と追加シナリオキットを制作し続けている。
  これらのほか、比較的緩やかなクロスオーバー的設定連関は、数多くのブランドで行われている。例えばLeaf(長瀬一族など)、Overflow(伊能-沢越一族)、age(姉妹ブランドの作品をも含む幅広い連関)、アトリエかぐや(TEAM HEARTBEATブランドのアイオーン・シリーズ。Berkshire Yorkshireブランドの白川姉妹や御堂一族など)、ORBITすたじお緑茶(榊一族など)、UNiSONSHIFT(一部作品の魔界設定)、トラヴュランスなどが、比較的多数の作品に跨る連関を与えている。ソフトハウスキャラも、16作品全てが共通の世界設定を持つと解される(――別掲の拙稿「作中世界の相互連関について」を参照)。
  個別の続編またはファンディスクについては言うまでもない。そのほか、ブランド内の各作品に登場する常連キャラクターや共通名キャラクターがいる場合もある:Liar-soft各作品における「けーこ」のカメオ出演、たっちーのマスコットキャラクター「たっちーちゃん」、BaseSon作品の友人キャラクター「及川」、Lass作品の「千神奈々子」、Innocent Grey作品の「荒田大作」、ALcot作品の「西園寺」など。




  【追記コメント】
  註21で挙げていたのは原則として2008年時点でのもの。それ以降というと、『ジブリール』Frontwing、2004年~)、『らぶデス』TEATIME、2005年~)、『Sexyビーチ』ILLUSION、2003年~)、『VenusBlood』(2007年~)の各シリーズも4本以上になった。やはり3Dタイトルは、技術改良を踏まえたシリーズ新作発売が有意義なのだろう(――そうしたアップデート制作が、制作体制上も実行しやすく、商業上も作品内容の明確な改良アピールになり、そしてユーザーもしばしばそうした改良の成果を期待している、ということだろう)。他方で、シリーズが終了してすでに長期間経過したと判断されるものは割愛した(例:『ドラゴンナイト』シリーズ。……とはいえ、DK4のWin版が2007年に発売されていたらしいが)。また、これらの他にミドルプライス~ロープライスでの連作シリーズものもいくつか存在する。SkyFishの『ソレイユ』、BISHOPの『学園』、かぐやの『最終~』などは3本目までリリースされていて、このまま行けばいずれ4本目が制作されそう。そして実は『つよきす』も……。ことほどさようにきりが無いので、この部分をしつこく改訂していくつもりは無いが。
  ……てなことを書いてたら、本当に『ソレイユ』シリーズの第4作が発売されるらしい。

  そういえば、ソフトハウスキャラが『BUNNYBLACK2』の制作に着手した今、「ある程度の期間、継続的に活動していながら、FDも続編タイトルも制作していないブランド」ってこの分野に存在するのだろうか? 例えば2011年現在で活動5年以上、発売タイトル5本以上の実績があって、しかもFD、続編、シリーズもの、リメイクのどれも一度も作っていないメーカーorブランドというと……BLACK PACKAGEと、あてゅ・わぁくす、くらい? XERO系列にもほとんど無い筈(――『ステルラエクエス』に対するリメイク『~コーデックス』が唯一の例外)。ぱれっと(『さくらんぼシュトラッセ』のみ)と、Lump of Sugar(『しゅが☆ぽ!』のみ)も、作品数及び作品傾向のわりにはFD等が少ない。低価格メインのブランドにも、リリース本数比で見ると続編ものがかなり少ないところがある。

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