2011年9月25日日曜日

演出論的覚書:Ⅲ章2節4款:立ち絵のアニメーション化

  (4)部分的なアニメーションの導入 I:立ち絵画像について

  立ち絵に関して。いわゆる「目パチ」「口パク」、すなわち立ち絵に瞬き表現やリップシンク動作を付与することによって臨場感を増す手法は、前世紀からコンピュータゲームの様々な分野で行われてきたものであるが、現在のPCゲームでもいくつかのブランドによって実行されている。目パチ表現は例えばStudio e.go!pajamas softによって、また口パク表現は例えばminori『はるのあしおと』、2004年)によって。これらが徹底されれば、AVG画面の視覚的印象はアニメーション作品のそれへと大きく接近していくことになる。また、きわめて珍しい例であるが、F&CEscu:deには、イベントCGにも目パチ処理を施している作品がある(――F&Cでは例えば『Piaキャロットへようこそ!!3』[2001年]。Escu:deも『メタモルファンタジー』[2001年]、『英雄×魔王』[2005年]など複数の作品で実装している)。

  さらに、『終わりなき夏 永遠なる音律』φage、 2009年)は、目パチ口パク表現を、複雑な立ち絵アクションと組み合わせて使用している。それぞれを単体で使用する場合に比べて制作過程はいっそう難しく(あるいは煩雑に)なるが、それと引き替えに獲得された画面のダイナミックな印象は確かに注目に値する。ただし、これほどの演出努力をもってしても――あるいは、その過剰なまでの立ち絵アクションがかえって強調してしまっていることだが――、立ち絵素材の硬直性の印象は、払拭されたとは言い難い。

  別様のアプローチとして、チップアニメ等の形態でキャラクターの動的表示を行う作品もある。例えば、「ACTIVE DRAMATIZE NOVEL」と称する『誰彼』Leaf、2001年)には、チップアニメによってキャラクター全身像の様々なアクションを動的に表示するパートがある(――その際にテキストは、画面下部に字幕のように表示される)。『とびでばいん』abogadopowers、2001年)のAVGパートは、3D制作されたデフォルメキャラクターを、画面内の小ウィンドウの中で動的に表示する。『Vagrants』Studio e.go!、2003年)は、チップキャラの各種アクション表現を3Dマップと組み合わせたRPGである(――SLGパート上の演出については4章2節2款以下で述べる)。

  このほか、空中浮遊しているキャラクター(神、幽霊など)の立ち絵がゆるやかに上下動している例もよく見られる。


  【追記コメント】

『誰彼』 (c)2001 Leaf

  いくつかの場面では、左図(1~3)のような表示スタイルになる。
  これらのパートでは、人物や背景部分がさまざまに動く(アニメーションする)。例えば、歩行アニメ、呼吸をあらわす身体上下動、台詞に合わせた口パク、さらには銃撃や格闘などの複雑な運動まで、チップアニメで表示される。背景部分にも、波打ち際の波頭アニメや、光源表現(夜間街灯の下を歩くと明るくなる)などがある。

  これらのシーンでは、テキストはオリジナルフォントを用いつつ、字幕のように画面下部センタリング表示される。人物の動作等はアニメーション演出によって描写されるため、テキスト上での地の文は基本的に用いられない。
(図2:)この図では、闇夜シーンでキャラクター画像の明度が下げられている点と、懐中電灯の光が表現されている点が見て取れる。波音や虫の音などの音響表現も繊細に組み込まれている。
(図3:)一連のダイナミックな劇的表現の中で、特に重要な場面では、このように専用素材を投入して状況表現の迫真性を高めている。

『とびでばいん』 (c)2001 abogadopowers

  本作のAVGパートでは、左図のように3D制作された人物画像を小窓の中で様々にアニメーションさせつつ会話進行していく。キャラクターたちは、歩行移動、振り向き、浮遊、表情変化、回転など、多彩な動きを示す。
  なお、これらの素材は、STGパート上のユニット表示とも共通化されており、それによって表現上の一貫したコミカルさが表されている。
『Vagrants』 (c)2003 studio e.go!

  3Dマップの上で、チップアニメ――画像連続表示で擬似アニメーションするもの――のキャラクターたちが動き回るRPG作品である。テキストは画面下部に表示される。
  同様のアプローチは、同社の『ひとがたルイン』(2004年発売の横スクロールアクション)や『月神楽』(2007年発売のSRPG)などでも採用されている。




  リンク:Leaf公式サイトの『誰彼』紹介ページ。「ACTIVE DRAMATIZE NOVEL」システムの紹介も含まれている。

  「チップアニメ」って一般的に通用する言葉なんだろうか。「ひとまとまりの(比較的小さな)静止画像(chip)をコマ送り表示していくことで局所的に(擬似)アニメーションさせるもの」という理解でいいのだろうか。


  管見の範囲で、最もすごい(そして最もおばかな)立ち絵アニメはpajamas soft(『プリズム・アーク』)のそれ。アホ毛アニメ(ふよふよと動く)とかエルフ耳アニメ(ぴこぴこ上下する)とか……。『神採りアルケミーマイスター』(Eushully、2011年)の胸揺れアニメーションもなかなかのもの――ただし、今時わざわざこんなことをするか、という意味で。ただし、ゲル状人工生物(アースマン)の立ち絵をふよふよと柔軟にたわませてみせたのは良い使い方だった。
  立ち絵素材それ自体の(擬似的/部分的)アニメーションとしては、「耳パタ」系エフェクトもありがちな発想のようである。『イヌミミバーサク』(千世、2008年)の獣耳や、『淫妖蟲』(Tinkerbell、2005年)――あるいは『はなマルッ!』(2004年)の時点ですでにあったかもしれない――の菫のリボンなど。
  立ち絵に付随するアニメーションVFXのユニークな例として、『らぶKISS!アンカー』(ミルククラウン、2007年)がある。主人公は、他人の感情をオーラとして視ることができるという設定で、立ち絵画像の周りに赤、青、黄、黒などのアニメーションエフェクトが掛けられる。『あるぺじお』は、立ち絵の2-3パターンの連続切り替えによって、長髪のたなびきを自然に表現し、また慌てて両手を振り回す立ち絵や、怒気に震える立ち絵、くるくると回転する様子などに簡易アニメーションを与えている。
  Leaf/AQUAPLUSのコンシューマ作品(『WA』『TH2DXPLUS』)などでも採用されているモーションポートレート技術も、この観点で視野に入ってくる。
  『朱』(ねこねこソフト、2003年)も、立ち絵の瞬きアニメーションを行っていた。

  空中浮遊立ち絵のふわふわアニメーションは、妖怪については例えば『とっぱら』の「鈴」、幽霊については『もしも明日が晴れならば』の「野乃崎秋穂」がある(本文ではこれらを念頭に置いていた)。類例はいくつもある。


  立ち絵の連続切り替えによる動的な振り付けは、『君が望む永遠』の時点ですでに実行されていた。これももう少し思考がまとまったら本文に書き込んでおきたい。

   一枚絵での目パチ口パクは、『はるのあしおと』でも実行されていたような……SSを撮っていないので確認できないが。『初音のないしょ!!』(Leaf、1997年)の温泉シーンでも楓&初音が目パチをしていたような憶えがある。『よつのは』も、立ち絵/一枚絵の双方で台詞に合わせた目パチ口パクを実装している。

  「立ち絵/一枚絵の目パチand/or口パクのあるタイトル」に関する情報はEGScapeにも無い。個人では収集しきれないが、きちんと跡付けられる価値のある要素だと思う。目パチ+口パクは例えばminori、age、ApRicoT(2003年の『Maple Colors』)、それから『Piaキャロ』シリーズも早期に実行していた憶えがある。

  あと、いきなり『終わりなき~』批判をしていてごめん。実際、プレイしていて違和感と不満を持ったのは確かだし、そしてもう一つ、「技術をただ使っても常に成功する(表現が自動的に改良される)わけではない」ということはどこかに書いておきたかった。
 
  「チップアニメ」というのは、技術とはまた別の次元の話だけど、これもどこかで言及しておきたかった。立ち絵表現にかぎらず、ちょっとしたエフェクトや背景アニメなんかも多くの場合チップアニメ方式だろうしね。MPEG等の動画ファイルでなくチップアニメを用いるメリットは、どんなのだろうか。1)軽く、2)複数同時実行が容易で、3)実行環境の調整も容易、といったあたりだろうか。とりわけSLG作品の複合表現の中で小型チップアニメユニットなどが多用されるのはそういう事情であろうかと想像される。

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