2013年5月15日水曜日

ウェイトレスものについての雑感

  ウェイトレスものについての雑感。


  『Piaキャロ』のような制服ウェイトレスものは結局この分野には趣向としてあまり根付かなかったのだろうかといったことをいろいろ考えていた。

  オレンジ、紅/ピンク、ミント、薄青といった明るく彩度の高い配色の、そしてビジネスライクで活動的なデザインの――つまりいわば”典型的なウェイトレスの”――制服は、『Piaキャロ』シリーズ(1996~)以来、『バイナリィ・ポット』(2002)、『ドキドキしすたぁパラダイス』シリーズ(2003/2005)、『Cafe AQUA』(2005)、『あると』(2006)、『トロピカルKISS』(2009)といった一連の作品(以上を第(1)類型として)を生み出してはいるものの、全体としては優勢にはならず、むしろ(2)メイド喫茶的ウェイトレス衣裳の隆盛を経由しつつ現在では(3)個人経営喫茶の自由なデザインが主流になっている、という感じで捉えられるだろうか。
  (2)の例としては、おそらく『Piaキャロ2』(1997年発売。選択可能な制服の一つにメイド服タイプがあった)及び『With You』(1998)を直接の契機として、『パティシエなにゃんこ』(2003)、『やきにくくりぷうぴ』(2003)、戯画の一連のメイ/ド喫/茶シリーズ(『ショコラ』[2003]、『パルフェ』[2005]、『フォセット』[2006]、『Always』[2006])、『美喰』(2004)あたりに大きなプラトーが形成されていたように思う。そういう展望を仮に設定してみると、2004年の『アメリカーノ、プリーズ!』はその当時の過渡期的折衷様式をよく表しているようにも思える。ただし、『星空のメモリア』(2009)の中で取り扱われた時には、メイド服フェティシズムの特別さの香気はすでに抜け落ちていたように感じられた。
  そしてそこから(3)個人経営喫茶への移行は、業務制服に限らずアダルトゲーム分野全体における服飾の自由化(あるいは、評価的態度を織り込みつつその一面を強調して名指しするなら、過剰装飾化)と歩調を合わせたものだろうか。『天使のいない12月』(2003)のシンプルでシックな制服、『人妻コスプレ喫茶』シリーズ(2003/2006)のボディコンシャスな制服、『さくらシュトラッセ』(2008)の可愛らしさを前面に押し出した制服、『水の都の洋菓子店』(2012)の随所に薔薇をあしらった華やかな薄桃色制服といったように、個人経営設定ならではの自由さを足掛かりにして、作品全体のコンセプト設計に合わせた服飾設計がそれぞれに目指されているのが見て取れる。
  (4)あるいはむしろ、ヴァラエティ豊かな複数のユニフォームを併存させる混淆スタイルの方が、現在では最も有力と見做されるかもしれない。『2度咲き! タルトレット』(2009)、『おしかけ!アントルメ』(2010)、『なでしこドリップ』(2011)、等々。ただしこちらも遡ればすたじおみりす(『いただきじゃんがりあん』シリーズ[2000/2005]、『まじれす!!』[2004])やlight(『ウェイトレスパラダイス』[2004])に先行作品が存在するが。
  こうして分類整理を簡単に試みてみたが、これがどれほど説得的なものになり得るかは分からない。少なくとも、個別の様式的”分化”ではなくて全体的な服飾趣向の変化と捉えるのがおそらく妥当であろうという感触は得られた。また、現実のメイ/ド喫/茶ブームが2001年から2005年頃に隆盛した(とされる)事実と考え合わせると、そういうサービス業分野の参加者層はフィクション創作分野の受容者層とは縁遠いかのように見えていたものの、もしかしたら実は少なからず影響があったのかもしれないとも考えさせられた。

  ……ていうか、そもそもファミレス/喫茶店ものって総数自体が案外少ないかも。
  ほぼ5年前の作品である『さくらシュトラッセ』(2008年1月発売)が「最近」と呼ばれたのには大きな違和感があったが、こうして長期間の展望で考えてみると、ぎりぎり「最近」と呼べる範囲内であるように思えてきた(――上の文章は元々、私自身がこの点を納得するために書きまとめてみたものだったりする)。
  こういうネタこそは画像引用するともっともらしさが増すものだが、本文自体がわりといいかげんなものなので、差し控えることにする。こういうのは本来は、私よりももっと多くの作品を知っている諸兄諸姉こそが手掛けられるべきものだった。
  一部のアレな言葉は検索避けしておいた。


  (2012/11/16公開。2013/5/15単独記事化)

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